✻ Pixel Garage
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赤い夜
EP. 09

廃車置き場の夜。ワットおばさんの蓄電パックがボルトにつながれた。バッテリー35% — 逃げ出して以来の最高記録だった。

「35%! 新記録だよ!」

「…私たち、基準がだいぶ下がったね。」

子どもたちは工房で見たものを話した。設計図。心臓。パパのメッセージ。

スパークはずっと静かだった。ずいぶん経ってから、小さく言った。

✢✳✻✽✻✳✢ 「心臓(ハート)…その言葉、聞いたことがある気がする。ずっと昔に。どこでだったかは…思い出せない。」

·✢✳✻✽✻✳✢·
▢ BATTERY 35%

バッテリー35%の夜

零時少し前。廃車置き場の塀の外に、改造キックボードが一台、音もなく止まった。

ジュールは塀の隙間から中をうかがった。死んだ車たちの森のど真ん中に — 死んだふりの下手な車が一台。ダッシュボードの奥から、アンバー色の光がごくかすかに漏れていた。

「…見つけた。拾った者勝ちだ。」

ジュールがポケットから手配書を取り出した、その瞬間 —

空から、赤い点が降り始めた。

··✢··
…見つけた。拾った者勝ちだ。

塀の外の狩人

深夜零時。スパークの光が逆立った。

✢✳✻✽✻✳✢ 「…来る。今度は、一機じゃない。」

灰色の空に赤い点が一つ、二つ — 六つ。廃車置き場を取り囲むように降りてきていた。

「包囲された。」

一機じゃない。

六つの赤い点

DRONE SWARM ─ LINK
> 対象捕捉 — 旧型EV · 白 一致
> 周波数分析 ⠋⠙⠹⠸⠼⠴⠦⠧⠇⠏⠋ …非標準コア信号を検知
『心臓』 — 確認。
> 包囲隊形を展開。

ドローンたちのスキャン光が廃車置き場を切り裂き始めた。だが — おかしかった。

六筋の赤い光が、すべて一点に集まっていく。ボルトではなく — ダッシュボード。スパークへ。

✢✳✻✽✻✳✢ 「…僕を探してるんだ。」

スパークの光が震えた。

✢✳✻✽✻✳✢ 「パパがボルトの中に入れたっていう、小さなもの。…僕だったんだ。最初から、僕が心臓なんだ。」

ボルトのヘッドライトが静かに、二度またたいた。知っていた、という意味だった。

✢✳✻✽✻✳✢ 「…君、知ってたんだね。だから十年消えてたんだ。僕を眠らせるために。」

✢✳✻✽✻✳✢ 「僕が出て行けば君たちは安全だ。あいつらが欲しいのは僕なんだから。」

「おい。」

ビットの声は低かった。怒った声だった。

「家族は置いていくもんじゃない。」

「脱出するよ。スパーク、まだ電気残ってるよね? — 計画がある。」

·✢✳✻✽✻✳✢·
家族は置いていくもんじゃない。

家族

「ここの車、バッテリーが完全に空じゃないの。底に少しずつ残ってる。一回灯すくらいは。」

✢✳✻✽✻✳✢ 「そして僕が — 僕の波形を何百にも分けて放送する。あいつらが探してる心臓の音を、ここ全体が歌うんだ。」

スパークの信号が夜の廃車置き場に広がった。一秒。二秒。そして —

何百台もの死んだ車が、一斉にヘッドライトを灯した。

廃車置き場が — 天の川になった。

それぞれが底に残った最後の電気で灯りをつけ — スパークの波形を歌った。ドローンのセンサーに、本物と同じ心臓の信号が何百も一度に映った。

「今よ!」

✦ 434 SIGNALS
今よ!

死んだ車たちの森が目覚める

ボルトは光の森を駆け抜けた。どの光が本物か — ドローンには分からなかった。

「出口は北! クレーンの下だ!」

ビットの声が道を開いた。路地でも廃車置き場でも — マップはマップだった。

廃車置き場を抜ける瞬間、ミラーの中で — 灯りがひとつずつ、ゆっくりと消えていった。

死んだ車たちは、最後に残ったぬくもりで、ボルトが逃げられるように助けてくれた。

ボルトは長いこと、ミラーをたたまなかった。

光の森を抜けて

塀の上で、ジュールはそのすべてを見ていた。

何百台もの死んだ車が、最後のぬくもりで道を開けるのを。一台の古い車が、その光の間を駆け抜けていくのを。

ジュールの手から、手配書が風にさらわれ — 闇の中へ消えていった。

拾わなかった。

塀の上の目撃者

GRID TOWER ─ MONITOR
> デコイ信号: 434個 — 追跡不能
> 対象消失 — セクター9方面 ⠋⠙⠹⠸⠼⠴⠦⠧⠇⠏⠋
「遊びは終わりだ。」
「…私が直接行く。」

新しい隠れ家の夜明け。スパークの光は、いつになく淡かった。

✢✳✻✽✻✳✢ 「大丈夫。ちょっと…疲れただけ。」

だが、一度分け与えた波形は、完全には戻ってこない。

その夜から — スパークの光は、少しずつ暗くなり始めた。

··✢··

淡くなっていく光

🔊 オーディオで聴く

このページのキャラクター — ガレージセール

ビット
中3 · 家族を数える人
ステッカーパック準備中
ドット
高1 · 計画担当
ステッカーパック準備中
ボルト
10年間知っていた番人
ステッカーパック準備中
·✢···
スパーク
心臓 · 光が淡くなっていく
ステッカーパック準備中
EP.10 —「四人」を読む →

週1〜2回更新

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